あんなにも

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あんなにも

 それにしても、姿を与えられ、ただ一人のあなたに認められることが、こんなにも快感だなんて。  あなたの母が、わたしの姿が書かれた画用紙を手に取り、あなたの頭を撫でています。  ちょっと得意げな、幼いあなたの顔。あんなにも愛しいものの存在を、わたしは知りません。  幼稚園のアルバムの寄せ書きに、ぐにゃりとしなって残された、ひらがなのわたし。そして小学校入学。学年が進むにつれ、少しずつわたしを形づくる漢字の割合が増えていく。  その変化がどれだけ嬉しかったことか。  断言します。改めて。  あなたをいちばん近くで見守ってきたのは、あなたのご両親でもおともだちでもない。このわたしです。  そして。自意識過剰、と言われるかもしれませんが。あなたもわたしのことを気に入ってくれていたと思います。女の子らしい可愛い音と、華やかな漢字の組み合わせで作られたわたしの姿は、あなたのおともだちからも、よく羨ましがられていたものです。  なかなかの優等生だったあなたの名前、つまりわたしは、さまざまな表彰状に墨で書かれ、教室の掲示板に貼られた成績優秀者名簿の中に、明朝体の活字でおさめられ、あなたの周りでどんどん増殖していきました。  それが、どれだけ誇らしかったか。
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