物語と勉強ドリル

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 学校の朝の読書の時間で読む本だって、物語の本を買ってもらえない宗助は、持ってきているドリルを読むしかない。  担任の先生も最初は、 「本当は、物語の本を読んでほしいんだけどね……」  そう言っていたが、最近はもう、何も言わなくなってしまった。  朝の読書用の物語の本を学校の図書室で借りてこようと何度も思った。しかし一人で図書室に行くのは、なんだか恥ずかしくて。結局ドリルを読むことになってしまうのだ。  そんな宗助だから、最近は書店に行くことも嫌になってきていた。 (どうして、本当に欲しい本が買ってもらえないんだろう。……僕だって一冊くらい、『本当に読みたい本』が欲しい)  そう思いながら、宗助は、欲しくもない計算ドリルを抱えてレジへと向かっていた。その時。 「おい、ガリじゃねーかぁ。まーた、ドリル買ってもらうのかよぉ」  学校以外では聞きたくない声が聞こえてきた。おそるおそる振り返る。同じクラスのガキ大将、カイトくんのにやにや笑いが飛び込んできた。  宗助は、学校では「勉強できないガリ」と呼ばれている。丸メガネで、いつもお母さんに買ってもらったドリルを持ち歩いているので、周りからからかわれるのだ。  しかもドリルを持ち歩いているだけで、テストでいい点数をとれたことがない。そんなわけで、宗助はカイトたちに、「勉強できないガリ」とあだ名をつけられたわけだ。 「か、カイトくんこそっ、こんなところで、何をしてるんだよっ」  宗助は、自分の声がふるえているのに気づいた。しかし、カイトはそれに気づかず、いじわるな笑みを浮かべたままだ。 「オレはよぉ、本なんてクソつまらねーモン、読まねーから。ただ、ウワサが本当か知りてぇんだよ」
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