突撃!プロポーズ

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とはいっても、幼児はたくましい。 破れた初恋のことなんて忘れてすくすく育ち、元気に高校生になりました。 そして入学した高校。 入学式の日に張り出されたクラス分けは1年3組。 担任の先生は、助飛羅郁という名前だった。 回りの子達も、担任の先生の名前がよめなくて、首をかしげてた。 とりあえず入学式が行われる体育館に行って、自分の席に座る。 特別何かあるわけでもない入学式が始まり、先生たちの紹介が始まった。 「1年3組担当、助飛羅郁(すけひらかおる)」 (すけひら……かおる? えっ?) 心の奥底に沈めて置いた名前が急に飛び出して、私は思わず立ち上がりそうになった。 (すけひらかおるって、もしかして……) まだ若い男性の先生はスーツを着ていた。 でもどこかに中学の制服を着ていたかおるお兄ちゃんの面影があるように見える。 (もしかして、本当にかおるお兄ちゃん……?) それから先、私は入学式のことは何にも聞いてなかった。 式を終えて、クラスに行って、一通りの予定の説明や配布物。 それを終えて教室を出た先生を私は追いかけた。 「すけひら先生!」 振り返った先生は、眼鏡をかけた、ちょっとイケメンって感じだ。 「うん、どやした? 何か分からないことがあったか?」 「覚えてますか、私のこと。みずのゆきです。ブロッコリーが嫌いだった」 先生はしばらく考えたあと、ああ、と手を打った。 「保育園の時、美保の友達だったゆきちゃん!」 「そうです! 覚えててくれたんですね」 途端に、自分からプロポーズをしたときのことを思い出してしまう。 ……どちらかというと、この年になってみると、あれは黒歴史だ。 カーッと顔が赤くなってくる私を見て、先生は小さく笑う。 「幼児に逆プロポーズはビックリしたな」 「すいませんでした……私、ホント子供で」 「そうだね、あれは子供のお願いだもんね」 「忘れてください……」 「じゃあ、まずは先生と生徒か始めようか、よろしく」 そう言うと、先生は職員室に向かって行った。 (わあ……こんな偶然ってあるんだ) 私はドキドキしながら、先生の後ろ姿を見送った。 でもその時気づいてなかったんだ。 先生が、私のしたプロポーズを忘れるよ、と返事をしていなかった事に。
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