大人になんてならないで

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頬をなでる柔らかい風で目が覚めた。 スマートフォンで時間を確認すると、時刻は正午を回っていた。 狭い部屋を見渡しても、セーラー服を着た14歳の私の姿は見当たらない。 「今のは……夢?」 気分の良くなる夢ではなかったけれど、漫画を描きたいという意欲が数年ぶりに芽生えた。 無くしかけていた自分の心の欠片が、戻ってきたような感覚。 「確か捨ててなかったはず……あったあった。」 クローゼットにしまい込んで長いこと手を触れていなかった、作業用のパソコンとペンタブ。 埃を綺麗にふき取って電源を入れると、コルクボードに飾った写真が一枚、ひらりと揺れた。
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