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「ちょ、タイム。状況が飲み込めないんだけど?」
社会人にとって貴重な休日。
今日は一日家に引きこもって、撮りためたドラマとアニメを観ようと思っていたところだったのに。
ボサボサの髪の毛で寝間着のままの私を見て、14歳の私は「はぁー」と深いため息をついた。
「大人になった私の自堕落な姿を見ていられなくなって、飛び出してきちゃった」
彼女はポニーテルを揺らしながらソファに腰かけると、ベッドに座ったままの私に向かって投げかけた。
「ねぇ、もう漫画は描かないの?」
純粋な問いかけに、胸がチクリと痛む。
小学生のころから、将来の夢は漫画家だった。
中学生、高校生と進学してもその夢は変わらなくて、授業中はノートをとるフリをしながら漫画ばかり描いていたっけ。
雑誌の新人賞に応募したり、描いた漫画をネットにアップしたり。自分なりに頑張ってたし、充実してた。
「漫画じゃ食べていけないからさ。もう大人だし、生活していくためには働かなきゃ」
大学生になったあたりから、少し風向きが変わった。
周りの友達はもっと現実的な、地に足のついた将来設計をしていて。
漫画家になるっていう私の夢は少し浮世離れしていて、自分の夢を口にするのを躊躇するようになった。
それでも漫画は描き続けていて、新人賞の上位に入賞したこともあったけれど、漫画家としてデビューすることは叶わなかった。
結局周りの友達と同じように、地に足をつけて一般企業でサラリーマンとして働くことにしたんだ。
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