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母は、もう覚えていないだろうな。
母の口許の食べカスを布巾で拭いながら、私は一人、思い出に浸る。
私が初めてシチューを作ったのは、母の誕生日。
どうしても一人で作りたくて、母には台所に入れさせなかった。
椅子を足台に台所を行ったり来たり。
慣れない手付きで野菜を切って、鍋に水を入れ火にかける。
たったそれだけの誕生日祝い。
肉も入れていなければ、シチューのルーも足りなくてビシャビシャ。
野菜は火が通っておらず、ほとんど生に近かった。
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