1人が本棚に入れています
本棚に追加
***
それは新居に引っ越して、2週間経った頃だった。
「椅子の下に敷くやつ買わん?」
秋生がリビングテーブルの椅子の背を持って立っている。
みやびはソファでスマートフォンをいじる手を止めた。
「ああー、いいね。あの靴下みたいなやつでしょ?」
「うん、まぁ、靴下でもフェルトみたいなやつでもなんでもいいけどさ、」
秋生は椅子をひいてみた。
ズズーっと音がするし、いかにも床に傷がつきそうだった。
「これじゃ、下の階の人に迷惑かかるよ。上からも、結構椅子とかソファを動かす音とか聞こえるやん」
ここはマンションの7階の一室だった。
騒音という程ではないが、上の人の掃除機の音、家具を動かす音はたしかに聞こえる。
秋生はかなり人に気を遣うタイプであり、初のマンション暮らしだから、物音をとても気にしていた。
「そやね、じゃあ今度の土曜日、ホームセンター行こっか」
最初のコメントを投稿しよう!