新しい形

1/3

1886人が本棚に入れています
本棚に追加
/55ページ

新しい形

腐れ縁を経て、何故かお互いに飲み友達になり、家を行き来して帰るの面倒とか言っていたら、一緒に暮らす?なんて話になって、家賃浮くね、とか言いながら2LDKの賃貸マンションに引っ越して、お互いの会社の中間で都会で便利で家賃折半だから、一人の時より広い部屋で家賃が安くて助かった。 そんな風に始まった同棲というか最初はルームメイトみたいな感じだったのが、いつの間にか恋人になりそのまま結婚。 「良く知ってるし隠す事ないし、一生、共にいるならそういう相手が一番だよな。」 と奴は言った。 私もそう思った。 結婚願望はなかったし、職業柄、男性の中で仕事していて、女性らしさはおそらく皆無。 そこが既にばれている相手としては気楽で、結婚しても無理に取り繕わなくて良いし、お互いの仕事にも理解がある。 嫌いじゃないし、嫌いな相手と同棲も出来ないし、そこまで器用な女でもないし、ずっと…好きだったと思う、無自覚に私は。あくまでだ。 だから奴が結婚の二文字を口にした時は正直嬉しかった。 顔には出さなかったけど。 25の時、婚姻届を二人で出した。 夫となる人の家に挨拶に行って写真だけを撮った。 お互いに忙しくすれ違う毎日、それはルームシェアと変わらない生活、三年目に入って奴が言ったのだ。 「俺たちの結婚の意味って何だろうな?」 「はっ?」 意味って言われても、掃除も洗濯も出来る方がやるとなっているが、殆ど休みの日にやっているのは私で、奴がやるのは食べたい時だけついでに私の分も料理する位、忙しいのはお互い様なのに…。 「今更?それ、私が聞きたいけど?」 と答えると、整った切長の目を鋭くして、真面目な顔で言い放つ。 「結婚してると便利な事もあるよな?だけどお互い時間も合わないし男と女ていうよりは同士って感じだよな。その場合さ、女性を求めるには他に探すしかないと思うんだ。新しい夫婦の形を作って行かないか?俺たち。」 「はぁ?」 意味不明だったが取り敢えず話を聞いた。
/55ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1886人が本棚に入れています
本棚に追加