変化

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「まだ離婚してない。それに…貴子さんには悪いけどもうそういう事はしない。」 「あら?性的欲求強過ぎるのかもしれない、なんて悩んでた人がそんな事言うの?奥さんを壊しかねない、毎日求めてしまうからって悩んでいたから相手をしてあげてたのに…今時いないわよ?奥さんの名前を呼ばれて代わりに抱かれてあげる女。大事にしないとバチ当たるわよ?」 くすくす笑いながら、小声で貴子は言った。 「貴子さん…熱を出した俺を送ってくれた日、ピアス、わざと置いていった?」 ピアスは既に返していたが、何処で落としたか分からなくて探していたとお礼を言われただけで、その時はお互いにそれ以上、話はしなかった。 「……態と、だったらどうするの?怒る?それとも別れるきっかけをありがとうって言う?」 クスクスと笑ってシャンパンを口にする貴子は楽しそうに微笑んでいた。 「俺の責任だから怒らない、けど、どうしてそんな事をしたんですか?付き合う時、貴子さん言いましたよね?ご主人が一番好き、ただの遊び、いつまでも綺麗で居たいから…。俺たちを別れさせる意味が分からない。」 「ふふっ…今も同じ。私は旦那が一番好き。愛してる。でも彼は一人では満足しない。逆に言えばすぐに飽きちゃうの。一度手に入れば満足するタイプ?それって、妻はどうしたらいいのってならない?飽きさせない為に常に緊張感と危機感を持たせておくの。いつでも他に男はいる、そういう匂いを纏わせておくの。歳下のあなたはいい相手だった。身近だしね?ヤキモチ妬いてくれるし大事にしてくれるし、だからお礼に何か出来ないかなって奥さん、どんな人か見に行ったの。」 「えっ?会いに?」 「ううん、見に行っただけ。奥さんは知らない。うちの旦那ね、すぐ手を出すの。5年くらい前かな?あの人が高級レストラン予約しててね、今、落としたい子がいるんだと思ったわ。その頃は割り切ってないから見に行った。コッソリね。まさかその時の女が源基の奥さんになってるとは思わないでしょ?意地悪しちゃった。」 大きな息を吐いて貴子の目が真っ直ぐに向けられていて、源基は驚いて目を見開くばかりで言葉が出て来なかった。 「若くてドレスアップして凄く綺麗な子だった。現場では男性みたいだったけど、嫌になるわね。あの頃より綺麗じゃない?」 そう言った貴子の目は俺を通り越して、入り口付近を見つめていた。 振り返ると、紺色のスーツの男性の腕に手を置いて、緋色のロングドレスを身に纏った緋色がいた。
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