新しい形

2/3

1886人が本棚に入れています
本棚に追加
/55ページ
奴が言うには今の状態はお互い仕事をするには良い環境で、サポートも万全、だけど異性は求めたい、それが無理なんだからお互いに恋人を作るのを許可するのはどうだろう、というものだった。 「阿呆らしい……。」 当然、一蹴したが奴はニヤリとこう続けた。 「お前、彼氏作れないんだろう?30手前じゃ無理だよな?しかも昔から興味なさそうにしてたし、結婚だって俺が言わなきゃ永遠に誰ともしなかっただろ?する気もなかっただろ?」 カチンとした。 図星だったのもある、興味もなかった。 諸事情があり、男は皆んな汚いと思ってた。 奴の清々しい程の女好き、女性であれば年寄りにも優しくする、そんな姿を見て自分も女性扱いされて友人になったのが間違いだったかもしれない。 「まだ27!!」 「もうすぐ28だろ?」 「つまり新しい夫婦の形とか言いながらあんたは妻公認の浮気をしたいって事でしょ?綺麗な言葉で誤魔化そうとしないでよ!」 呆れながら言うと、 「最近、そんな夫婦多いらしいよ?恋人が別にいると自然と家に帰ったら相手に優しく出来る。スワッピングするよりも特定の相手、お互い知ってていいと思うけどな。ルールをちゃんと決めて、お互いにいい所を取る。」 「スワッ………私は嫌!」 言いかけた言葉を飲み込み、信じられない、気持ち悪いという目を向けて、私は直ぐに拒否の言葉を吐いた。 この話は終わり!と踵を返した瞬間、背中から声がした、絶望の声だった。 「だってさ、もう随分してないだろ?男として見てない、ていうか、最初から見てないよな?結婚って言われて都合良かっただけだろ?仕事の邪魔にならない男。もうさ、俺もお前相手じゃ無理だし。」 泣きそうになった。 (三年も一緒にいてあんたなんにも見えてないじゃん…。) 悔しいからいつもの強がりを言った。 「好きにしたら?嫌だって言ってもするんでしょ。ルールとやらはきっちり決めてよね。」 離婚、奴から離れる、その考えは頭に浮かんだけど、馬鹿な女はどこまでも馬鹿で………中学の時から私は奴が好きだった。 奴は知らないけど…。 そして「新しい夫婦関係」とやらが始まった。 きちんとしたルールと契約のもとで。
/55ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1886人が本棚に入れています
本棚に追加