微妙な空気

2/7

1887人が本棚に入れています
本棚に追加
/55ページ
入り口から少し奥、部屋の真ん中よりやや入口よりの左の壁を背にして、手前に源基がその横に淡い黄色のセクシーなロングドレス姿の彼女がいた。 ゆっくりと近付きながら、二人を交互に見る。 茶髪を片側に後ろ髪も回して流し、途中で左側の髪をクルクルと耳の後ろで止めていると分かる、そこに綺麗な花が咲いているからだ。 右側にクルクルと長く垂らした髪を手で整える様に数回撫でて、彼女は近付く二人に気がついて左手のシャンパンに向けていた目をこちらに向けた。 「こんばんは。ご挨拶、させて頂いてよろしいでしょうか?」 社交辞令の言葉を言いながら、緋色の目は奴のネクタイに留まる。 ーーー「緋色だから緋色!!蘇芳色って言うらしい。派手ではないだろ?そこまで赤!って感じでもないし。」 「自分の誕生日に自分でネクタイ買う?」 「だってさ、緋色の物みたいだろ?見つけたらこれだ!って思っちゃったんだよね。それに……「それに、まさか緋色が誕生日プレゼントを用意してくれてるとは思わなかった、て言うんでしょ?私、そこまでひどくないわよ?夫の誕生日はちゃんと覚えてますぅ〜。」 「ははっ…ごめん、ありがとう。嬉しい。」ーーーーー 幸せだった頃の事が思い出されて小さく嗚咽した。 「……っ。」 一瞬、顔を背けると祥一は心配した顔を向け、源基は思い出した事に気付いて緋色を見つめ、面白くない顔で貴子が口を開いた。 「こんばんは。奥様もいらしていたんですね?私、今井事務所でパートで働いています、石山貴子と言います。今日は社長の今井と奥様と一緒に参加を。春木さんがお相手がいないと言うので女性で時間のあるのが私だけでしたのでご一緒しました。良かったかしら?」 「……えっ?あ、ええ。勿論。あ、初めまして。名刺はおめでたい場ですので遠慮させて頂いてます。春木…………牧本(まきもと)と申します。こちら、」 「館林と言います。今日は緋色さんに誘われまして。」 緋色が言おうとした事を少し身体を緋色の前に半身出して、貴子から隠す様に、館林は名乗ってくれた。 「初めまして、館林さん。素敵な方ですね?牧本さんの恋人ですか?」 「ええ。付き合ってまだ3か月ですけど性格が合うみたいです。」 「相性って大事ですよね?性格もですけど、心も…体も。」 クスッと笑い、視線を緋色に向けて言い、貴子はグラスに口を付けた。
/55ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1887人が本棚に入れています
本棚に追加