微妙な空気

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「駄目ダメ!こっちさ、中庭に繋がってるんだ。離れもある。家族しか来ないからゆっくり休めるよ?あなたと話したかったんだよねー俺。親父に挨拶に来た時からさ。一回会ってるよ?バイトで無理やり命令されて、緋色さんの会社に行かされてたから。全然違うから驚いちゃったよ。すげー美人じゃん。勿体ない。何で会社で隠してたの?遊んでいこうよ。緋色さん、27、8?だよね?」 「29よ!!遊ばないわよ!放して!!10も上の!30手前のおばちゃんと遊んでどうすんのよ!」 キッと睨むと、お腹の手を捻り上げた。 「悪いけどこういう事には慣れてるの。痛い目見る前に放して。」 お腹に回された手は別の男の子の物で、彼は肩を押さえていたから安心して向きを変えて戻ろうとした。 瞬間、両手を捕まれて、違う手が腰に回されて奥へと引っ張られた。 ******** 「止めて!帰るとこなんです!放して下さい。」 大声を上げると口も塞がれた。 「大人しく着いてこないと抱えちゃうよ?こっちは3人だからねぇ。」 (酔ってる?) 「家族もみんなあっちだから庭にも離れにも誰も来ないし、少し大きな声出しても聞こえないよ。賑やかだからね。一応、考えたんだよ?若い子はいるけどさ、親と来てるでしょ?後が面倒だし、おばちゃんは嫌だし、その点、連れは先に帰ったし、緋色さんも帰るとこだったし、歳下相手にしておいて言えないよね?犯罪じゃん?」 「30は驚いたけど、見えないし綺麗だから問題なし!」 「だなぁ。細いし色白いし、本当に現場作業員なのかなぁ?」 (酔っぱらいの上、変な知恵はつけてんのね!どうやって逃げよう?) 塞がれた口をまずは僅かに開けて、目の前の邪魔な物を噛んでみる。 「痛っ!!この、あまぁ!!」 相手が殴ろうと手を上げた瞬間にスーッと息を思いっきり吸い込み、超特大の悲鳴を上げようとしたその時、後ろから怒鳴り声がした。 「何してる!!お前ら何処の誰だ!招待客を何処へ連れて行く!!」 「やべっ!親父に言うなよ!!」 捨て台詞を残してバタバタと奥に走り、消えて行く背中を見ながら、ヘナヘナと緋色はその場に座り込んでいた。
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