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気持ちを吐き出して
「待て!!くそっ!大丈夫か?」
手を差し出されて、その手を見た瞬間、声に気付くとすぐに誰だか分かる。
だからその手を拒否して緋色は自力で立ち上がった。
「ありがとう。助かりました。酔っていたみたいで…。失礼します。」
元の通り道に出て、タクシーの方へ歩くと隣に普通に並んで奴が歩いていた。
「何か?お礼がまだ足りない?」
前を向いたままボソッと話す。
「今の奴ら、放置でいいのか?それに話があると言っただろ。一緒に…話が出来るとこに…「恋人はいいの?」
顔も見ず、はっきりした声で奴の声を遮った。
(話なんかない、聞きたくもない。)
心の中でそう思っていた。
「恋人はもう違う。別れて来た。」
その言葉に足がピタッと止まり、顔だけを横に向ける。
「何、それ?別れて来た?一年も付き合ってあんたフリーになったのに何で?!」
(ほんっと!!意味不明!!何なの、この男!)
「貴子さんは…彼女は旦那さんが一番で長くは付き合わない。最初からそう言われてた。」
「はぁ?………好きなんでしょ?好きだから付き合ってたんでしょ?熱があるのに自宅まで送らせたのは好きだからでしょ!お互いに!旦那が一番て…あんなしょうもない旦那よりまだあんたの方がマシよ。別れて再婚すればいいじゃない。好き同士なんだから!!」
(私の今までの苦労とか気持ちとか痛みとか…意味不明な恋人とか、別れたとか言わないでよ。)
怒りで思わず声を荒げると、背中に手を添えられてタクシーに乗せられた。
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