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「情けないけど正直に言う!これが最後になるなら言わないと損な気がする!」
今度は源基が鼻息荒く、隣に座る緋色の方に体ごと向けて話し始める。
「な、何よ?浮気は本当の事で源基がして来た事は言い訳出来ない事ばっかりだからね!」
顔を見ずに真っ直ぐに前を向いて緋色は強気の姿勢を貫いた。
「言い訳はしない。浮気はした。貴子さんとは確かにそういう関係だった。緋色に拒否られて今までもするの嫌だったんじゃないかと思った。…その…昔の…詳しくは知らない。噂で聞いた事で、俺はそんなの信じないってずっと思ってたし…だけど、もし緋色が傷付けられたなら、嫌だろうなって今まで無理に付き合ってくれてたのかなって、だから子供も…そう考えたら触れるのが怖くなった。なのに二人でいたら触れたいし我慢してるから手を出したら抱き潰してしまいそうだし…緋色の仕事は現場にも行くし、高い場所にも登る。足場も行くだろ?疲れて寝不足で危ないから…考えたら余計に仕事忙しいって聞くと手が出せなくなった。また拒否されるのもきついし…。」
「なにそれ。私が拒否したから浮気したって事?今まで直接聞きもしないでくだらない噂を信じたって事?そんなの浮気の理由にされたくないわよ!」
かぁぁぁぁ!と頭に血が昇った。
「売りなんかしてない!母親の恋人に手を出されそうになったけど、触られてる段階で母親が帰宅して…………私を叩いて、責めたの。そこに相手の奥様が来て、現場を見て察して下さって…母親から引き離してくれた。高校も大学も奥様の支援で通えたの。確かに、あんまり好きじゃない。思い出すから…ナメクジが這う様な気持ちの悪い感覚を…。」
「な、なめくじ、なの?」
何故か異様にショックを受けている源基の顔を見て、緋色はその時はね!を強調して言った。
「好きな人が出来ても無理かもって思ってた。だけど源基とは自然にそうなれた。平気だったし幸せだった。」
「だ、だったらなんで拒否?」
「もう!疲れてる時は仕方ないでしょ?そういう時もあるの!拒否した事は悪かったと思うわよ!でもね、これもずっと言いたかったの!源基も悪いのよ!」
開き直った様に源基の方に体を向けて、頬を染めたままで潤んだ目でそれでも言葉はしっかりと怒ったままで、緋色は源基の顔を正面に見て話す。
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