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過去と現在
「あの男にはちゃんと別れを言うんだろうな?言えるんだよな?」
「あんたね?それ私のセリフよ。石山さんとちゃんと別れられるの?あの人の旦那さん、かなりの変わり者よ?奥さん、前に既婚者とW不倫してたのバレてどうなったか聞いた?」
きょとんとした顔をして源基は首を振った。
「既婚者とはないって、バレた事も…。」
と答えると、緋色は呆れた顔で源基を見つめて即答した。
「嘘よ!騙されてるわよ、源基。私が付き纏われて同棲開始して、結婚秒読みですって話して…仕事の場でよ?部長に付き添ってもらってこれ以上うちの社員に付き纏わないで頂きたいって、そうじゃないと仕事は受けられないとまで言って頂いたの。それで諦めてくれたんだけど、担当も外れてね。その後で担当になった人に聞いたの。奥さんの浮気がバレて相手に言ったんですって。うちの妻と楽しんだのだから、あなたの奥様にお相手して頂いたら水に流します。」
寝室にシーンとした空気が流れた。
「…それ、慰謝料とかじゃなくてスワッピングみたい、な?」
「お金はあるからいいんですって。それで相手の奥さんも知ることになるし、男としては屈辱でしょ?不倫の代償に妻を差し出せって言われている事になるんだから。どうしたかまでは知らないけど、貴子さんは知ってるはずだわ。」
全く…関わりたくないと言い、緋色は水を飲んだ。
「俺…今、すげぇ怖い想像したんだけど……まさかね?」
「私もしたわよ?石山陽治、知ってますって言われた時ね。」
「はは………まさかね?俺との事がご主人にバレたら、慰謝料請求の代わりに……緋色を………。」
「……あるかもね。」
「おま!平然というなよ!怖いだろ!」
ガバッと後ろから抱き着かれて、緋色はエルボーを決める。
「誰の所為だ。誰の!」
「そんな旦那って知らないから!貴子さんは最初から知ってたんだよな?それ狙い?」
「さぁ?あるかもね?あの貴子って人、異様にご主人の事、好きらしいから。ご主人が喜んで満足するなら浮気でも構わないってそういう人でしょ?」
ゾーッとして源基は鳥肌が立った。
もう一度、背後から緋色を抱きしめる。
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