過去と現在

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背後からお腹に手を回して自分の方へ引き寄せると、ゴロンと緋色の体重が胸付近に掛かる。 「ちょっと!!」 下だけを履き、ロングカーディガンを羽織っただけの緋色は、抵抗なく抱きしめられて、諦めた様に源基の体の上に頭をのけぞらせた。 「本当に館林祥一は恋人役、なんだな?」 「疑い深い男は嫌いよ。」 「子供、出来たら産もう!出来なかったら定年近くに犬を飼おう!」 「そういう事を簡単に言っていいの?」 のけぞらせた頭を戻して、源基の顔を見て言うと、源基がニヤリと笑い、その手が頭の後ろに伸びた。 引き寄せられてキスをされる。 「仕事は出来る範囲で続ける。俺も子育て協力する。こういう時は小さな事務所で良かったと思う。仕事の打ち合わせは外だけど、事務所でしてた事は家でも出来る。子供の面倒見ながら週に何日かは家で仕事する。緋色はそこで会社に行く。どうだ?」 「協力は有り難いし仕事を続けたい私への理解も嬉しいけど…まだ出来てないし、出来るかも分からないわよ?案外不妊、いや…源基の方が回数はこなしてる訳だから、源基が出来ない人かもしれないわね?」 真面目な顔で緋色が言うと源基はおい!と緋色の体を引き寄せ、自分の身体と入れ替えて下に組み敷いた。 「ちゃんと避妊してたから!」 「それは当たり前でしょ!馬鹿なの?完璧じゃないわよ?どうする?この先、石山さんが妊娠しましたって言ってきたら。他の女の子が責任取ってって来たら、既に生まれてたらどうするの?」 意地悪な言葉を甘い声で囁くと、緋色が楽しそう微笑んでいた。 「おまえ……俺を虐めて楽しんでるな!」 ぎゅっと抱きしめて首と肩に顔を埋める。 「だって!……本当に離婚しない気?もし本当に子供がいますって来ても?」 真面目な声がして顔を上げると、泣きそうな緋色がいた。 「結婚前だよ、最後の浮気。本当に。半年前から石山貴子だけ、だけどそれもこの先は絶対にない。慰謝料代わりに奥さんとか……マジであり得ない。怖過ぎる。結婚も何となく緋色は記入したけど……俺は嬉しくて指が震えた。写真撮影も感動した。本当は挙式もしたかった。二人だけでいいからしたかったよ。緋色は絶対渡さない。別れない。何も言ってくれないけど…だから不安だったけどもう気にしない。俺が緋色が好き。誰よりも大事で愛してる。」 途中から唇にキスをして、少しずつ源基も唇の感触が下へと降りていった。
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