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「手を貸せと言ったの!」
「ずっと立つのきついと思うよ?シャワーの間の為に体力温存した方がいいよ。それとも移動は自分の足でして、シャワーは手伝って欲しい、いてっ、暴力反対!」
脱衣所で下ろされて、頭を押さえる源基を見て、
「大袈裟なのよ。軽く撫でただけじゃない。あんたが今までして来た事に比べたら可愛いもんよ。」
と言ってから、源基の前でするりと上着を脱いで、そのままヨレヨレと風呂場に入った。
ドアを閉める瞬間に、ジロリと源基を睨み、
「本当に抱き潰されるとは思わなかったわよ!!」
と、負け惜しみの言葉を吐いて緋色は勢いよくドアを閉めた。
「産まれたての子鹿みたいで可愛いけど、そこ、もう少し恥じらいながら行くか、セクシーに入ってくれたらいいのになぁー。」
と聞こえる様に大きく言うと、
「ふざけんな!!散々見ておいて今更か!!」
と男らしいお言葉をもらった。
「ご飯用意しておくねぇ?無理そうなら今の元気な声で呼んでね。」
と言い残し、クスクス笑いながらキッチンへ戻った。
「緋色がかわいっ!素直だし…。うん!良い出来!次の休みにでかいベッド見に行って〜、俺の部屋を共同の寝室と着替えの場所にしてー、緋色の部屋をお互いの仕事部屋にしてー、子供出来たら狭いなぁ…うん、引っ越しだな。」
これからの生活を考えながらルンルン♪しながら、フライパンからハムエッグを皿に移し、出来栄えを褒め称えて、源基はご飯、お味噌汁、ハムエッグをテーブルに並べて行く。
料理も同棲時代から早く帰った方がやる決まりになっていて、一人暮らしも学生時代からで自炊は当たり前だったから、二人分作るのも大した物は作れないが苦ではない。
よしと、満足気にテーブルの上を眺めてから、源基は風呂場に向かい緋色を見に行く。
脱衣所のドアを開けると、洗濯機の前で、緋色は脱衣所に座ったまま、シャツを被ろうとしていた。
着替えを手伝って、お姫様抱っこでダイニングテーブルに座らせて、二人でいただきますと言うと、食べ始めた緋色を見つめて、源基は笑顔で話し掛けた。
「今日が仕事休みで良かったね。」
「……日曜は普通休みでしょ?婚約披露パーティーを平日にやって人が集まるとも思えないし?」
淡々とした冷たい返答が戻った。
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