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今、行っている現場は会社からも遠く、車で2時間掛かる為、早朝顔を出す時は会社には行かずに直行する。
一応は車の免許も持っているので、会社の車を借りて家に帰宅して、近くのパーキングに停めている。
早朝から動く時は電車よりも道も空いていて早く着く。
2時間も掛かるならいつもは会社との間辺りか、現場付近のビジネスホテルに泊まる。
落ち着く間の事で、今回のような小さめの自宅兼商業ビルなら2週間程度の泊まりで良い所だが、泊まっていると何故か奴が訪問する。
なんでか泊まる。
奴曰く、
「同じ空気を吸いたいから。」
と言うが、それって変態に近いよね、と思ったものだ。
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「緋色が空気を吸ってて、緋色の匂いがして、それを俺が吸うだろ?たまんないよな?幸せ感が…。」
「………あのさ?それ、私が吐いた二酸化炭素を吸うって事よね?」
「そうなるのかな?」
「……いや、なんかさ、想像すると…ちょっと間違えたら変態かストーカーじゃない?」
思いっきり嬉しそうな顔で、
「今日、抱き潰す?」
と言われたので、これ以上、ここに来た事に関しても泊まる事に関しても触れないでスルーした。
(なんか面倒そうだし……。)
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こんなに甘い男だったのかぁ〜!!…と叫びたいほど、実に尽くしてくれる甘い男の源基は、休日も早く帰れた日も泊まってるビジネスホテルに来るので、なんだか家があるのに勿体ない気がし始めて、今は多少の距離でも帰る様にしている。
部長に頼んで社用車を貸してもらえる様になったから、割と通勤も楽になった。
そもそも家に帰る様になったのも、ビジネスホテルに来るだけではなく、こんなやり取りもあったからだ。
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離婚回避して家に戻り、2ヶ月後、大きな仕事が入り、暫くは早朝に現場も増えると判断した緋色はいつもと同じセリフを言った。
「暫く家を空けるけど週末には戻るわね。」
「分かった。頑張って!」
それがいつもと同じ返し、だったのに…その日は違った。
「えっ?!どれ位?」
「えっ?ど、どの位?………そうねぇ、2週間位かな?」
いつもとは違う返答に戸惑いながら緋色は答えた。
「長いよ!緋色は寂しくないの?俺は寂しい!」
その言葉にも甘ーい!と叫びたくなるほどで……思わず困惑した顔をしてから源基を見ると本当に捨てられる子犬の目をしていたので、慌てて言葉を発した。
「そ、そこまでストレートに言われると、なんだか…恥ずかしいわね。」
「言わないと伝わらないし気持ち!帰って来ないし、緋色!!学んだから、俺!!」
「いや…そこは学ばなくていいわ。」
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そんなやり取りがあった後、本当に仕事を終えたらビジネスホテルに来ちゃうので、泊まりは諦めたのだった。
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