エリート彼氏の、そんなところも好き!

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 と、喜んでいたのもつかの間。  いざキッチンに立つようになると、ほどなくして周道具が思ったところにない、という状況が頻発するようになった。  そりゃあね、ここはもともと、悟志がひとりで暮らしていたのだから、悟志の使っていた位置に戻したくもなるよね、と最初のころは黙ってわたしが決めた位置へ戻していた。  だが、直しても直しても、お皿も道具も位置が変わっているのだ。  重い皿は下の棚に、鍋やざるやボウルはそれぞれ分けて入れ子状態に、というのがわたしの置き方だ。でも彼は、ざるもボウルもいっしょくたにして、そのうえ大小混ぜて片づけている。見た目がぐちゃぐちゃで、取り出しにくいことこの上ない。  あんまり続くものだから、ついに、ぶちっとわたしのどこかの糸が切れてしまった。 「ねえ、悟志、覚えてる? わたし、道具はそれぞれ別置きにしたいからってことと、取り出しやすいよう、入れ子上程に置くようにしたよね? 五徳もしまう位置を決めることで無意識に手に取れるようにしているんだよって話したよね?」  わたしはぐちゃぐちゃなボウルとざるをそれぞれの手に持って、リビングのテーブルにむかっている悟志へ向けた。悟志は帰宅してくるなり、ネクタイを緩めるとすぐにノートパソコンを開いて、恐ろしいほどのスピードでキーを叩き始めていた。  悟志がこのところ、緊急の仕事で忙殺されているのはわかっていた。あんまりあれこれ話しかけるのも控えていた。うるさいことを言うのはやめよう、と思う自分もいたけれど、わたしにだって譲れない線があるのだ。  
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