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それはまた、わたしの唯一の取り柄だと思っている。
それがあるから、わたしにはもったいない人だと臆病なわたしにならないで済んでいる。
キッチン仕事だけは、わたしの思うようにさせてくれるって言ったから、一緒に住んでも怯まないと思ったのだ。
わたしにとってキッチンは聖域。でも、悟志にとっては……?
それって、わたしのこと、本気で考えてくれているの……?
ぐるぐると考えているうちに、目頭が熱くなってきた。慌てて瞬きをたくさんする。
悟志は画面からわたしへと顔を向け、ぎょっとなった。
「うわ」
唸り声をあげ、一瞬でわたしへと駆け寄った。ボウルとざるを握ったままのわたしの肩へ両腕をまわし、
「ごめん!」
と、ぎゅっと抱きしめた。
「珠智との大事な空間なのに、悪い! ぼく、いまキャパシティーオーバーなんだ」
おろおろ声だった。
そんな悟志をいままで見たことがなかった。
というか、悟志にも限界があるのか、ということを知ってびっくりした。
「珠智のことをないがしろにするつもりなんか、まったくないから! むしろそばにいてくれてすごく心が楽なんだ」
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