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「ねえ、覚えてる?」
家に入ろうとした俺の前に、突然現れた彼女は言った。思い出そうと必死に頭をひねるが、どんなに考えても相手が誰かわからない。
「二年ぶりだね。だいぶイメチェンしたからわからなかった? 亜希子だよ。もう卒業だけど、大学だと話しづらいから直接家に来ちゃった」
「…………」
俺はどんな顔をしたらいいのかわからなくて、黙り込んでしまった。彼女はそんな俺の様子など気にせず話し続ける。
「あんな酷い別れ方したくせに今更だって思われるかもしれないけど、……でも、どうしても直接言いことがあったからここで待っていたの」
「あの、俺も言いたいことが……」
答えようとした俺を、彼女は制止した。
「何も言わないで。浩介の気持ちはわかってる。勝手な女だって言いたいんだよね。浩介と付き合ってるのに他の男を好きになってさ。やめた方がいいって言ってくれたのに……案の定、振られちゃったんだ。バカだよね」
「えっと……」
「ああ、安心して。復縁にきたわけじゃないから。新しい彼女ができたって聞いたし、もう愛想も尽きてるだろうからさ」
彼女はよほど決意が強いのか、俺に口を挟ませてくれない。俺はただ黙って彼女の言葉を聞くしかなかった。
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