2

1/2
前へ
/3ページ
次へ

2

鳴り響く電子音に彼は飛び起きた。 ベッドの横の心電図がフラットになっている。 慌ててコールを押している間に、看護師と医師が部屋に駆け込んできた。 直ぐに蘇生を始めるために後ろに押し出される。 足がへたって、座り込みそうになる。 彼は茫然(ぼうぜん)と管だらけの妻を見下ろした。 「頼みます・・先生!助けてください!」 体が意識せずに細かく震えてくる。 「駄目だ‥駄目だ‥逝かないでくれ・・独りにしないでくれ・・。」 生まれて初めて彼は神に祈った。 やがて医師は首を振って、彼女から離れた。 「ご臨終です」 彼は震える手で、妻の頬に触れた。 未だ温みの残る頬に、彼の口から叫びのような慟哭(どうこく)が漏れる。 死亡時間を告げた医師と看護師が深く頭を下げ、静かに部屋を後にした。 「僕は・・どうしたらいいんだ・・。君がいないと・・僕は・・」 彼は包帯に包まれた妻の頭を優しく撫でた。 「心から愛していたよ。君だけを」 涙がとめどなく溢れる。 もう、生きて行く意味なんて何もなくなった。
/3ページ

最初のコメントを投稿しよう!

5人が本棚に入れています
本棚に追加