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その時冷たく感覚の無かった自分の背後が、不思議なぬくもりに包まれる。 悲しみを癒そうとしているかのように、妻の気配を背後に感じた。 はっと彼は頭をあげ、そして周りを見渡す。 思わず妻の名前を呼ぶ。 「君は・・そこにまだいるのかい?」 ふわりと風がカーテンを揺らし、ガーデニアの香りが辺りに満ちる。 「ああ・・」 彼は目を閉じて、見えないものを見るように天を仰いだ。 「わかる・・解るよ。ずっと僕らは一緒なんだね」 彼は頑張り続けた妻の魂の乗り物に、薄い布団を整えた。 そして愛おし気にもう一度その手を取ると、静かに静かに優しく撫でた。 「今までありがとう。 僕のためにいっぱい頑張ってくれて、お疲れ様だったね。 僕が生きている限り、心はいつもいつまでも一緒だからね」 花の香りがまた強くなった。 穏やかに微笑んでいるようにすら見える妻の頬を、彼は再びそっと撫でた。 「きっとまた君を見つけるからね?」
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