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「え、宇宙人?まさか本当にいるとはね」
「地球の人達は未だに宇宙人の存在を確認していないようだけど、現実よ。30年前にあなたと会った時は、私が宇宙人だと説明しても理解できなかったようね」
「ああそうだったけ。でも考えられるな」
その頃の自分は、怪獣や宇宙人と戦うヒーローのテレビ番組をよく見ていたけど、幼な過ぎて宇宙人とか地球人とかいう言葉の意味は理解できていなかった。
「でも今なら話してもわかってもらえそうね。つまり・・・」
女の子は、これまでの経緯を話し始めた。
遠い宇宙のとある星に、一種族の1人として平和に暮らしていた。
ところが、どこからか別の宇宙人が侵略の手を差しのべてきた。怪獣を送ってきて都市を破壊していった。文明がほぼ壊滅した中で、種族はあちこちの星々に使者を送ることにした。
その中の1人である女の子は、地球へとやってきた。それから地球人の中で清い心の持ち主を探していき、そして自分が選ばれた。
女の子は自分に話しかけてきた。いずれ侵略者は地球へやってくるだろう。その時が来るまで眠っていることにすると言って、自分に取り付いた、ということである。
「え、それじゃ、君はずっとぼくの中にいたの?30年も」
「そうよ。今あなたが見ている私は幻影なのよ。体の大きさと姿は全く同じよ」
言われてみれば、どこか輝いているような感じは、立体映像のようであった。
「ていうか、ぼくから出られないの?」
「無理よ。私達の種族は地球人と比べて短いの。だから人間に取り付くことで寿命を保っていられるの。大丈夫よ。人間が生活する上での影響は全くなしよ」
自分はといえば、高校までは普通に行けたけど、大学では学習について行けず途中でやめて、今は事実上のフリーターである。30年も宇宙人の女の子が取り付いていたせいだとせめる気持ちはさすがにないけど。
「それで、私に初めて会った時のことは完全に覚えてないの?」
「うーん残念だけど。いやもう少し考えて何とか思い出してみようかな」
「じゃあそうしなさい。ゆっくりでいいわ。いやだけどできるだけ早くね」
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