アナザーメモリーヒーロー

3/8
前へ
/8ページ
次へ
それから自分は、昔のことを考えてみることにした。 いや自分は、普段から自分の過去について考えていた。 学校での出来事、昔見ていたテレビ番組、遠くへ旅行したことなど。 今も古い番組の放送をたまに見ていて、ネットで書き込みしたりしている。 自分のようなフリーターと違って、仕事に追われている人は過去を振り返る暇がないのだろうか、どうだろう。 30年前といえば、自分が幼稚園の頃である。そういえばあの時、車にひかれて胸にギブスみたいのを付けられていたんだったけ。 いつものように耳鼻科の医者に通っていたのを覚えている。そこからあとのことは覚えていない。気が付けば病院で治療を受けていた。 その時点まで何かをしていたのは確かなのだけど、どういうわけかそれについては思い出せなくなっていた。どうしてその時病院の一室にいたかも意味不明であった。何か知らないけどケガをしたみたいであった。 この出来事については以降も時折思い出すことがある。そして数十年間色々物事を知るに至って、あるいはと思った。記憶喪失から戻る時の感じはああいうのではないかなと。 記憶喪失になったあと元に戻ると、その間の出来事は覚えていないのだそうである。 当時の自分は人と話すのが不得意で、その頃自分が経験したことはこれまで誰にも話したことがない。今も不得意なのは変わらないか? このことを考えていて、もしやと思った。そして机に向かった。
/8ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1人が本棚に入れています
本棚に追加