イロウスィヴグリーンメッセンジャー

6/10
前へ
/10ページ
次へ
ネヒロネは乳製品や調味料等を購入し、待ち合わせ場所の噴水へと向かった。 アジガンダはまだ来ていなかった。 噴水の周りには、ぐるぐると走り回る子どもたちや、サンドイッチを食べているカップル等がいた。 皆、幸せそうな顔をしている。 そういえばアジガンダも、水が飲めれば幸せだと言っていたことを、ネヒロネは思い出した。 水には、人を癒し、幸せにする秘力があるのだろうか。 農場でずっと暮らしてきたネヒロネも、当然、水の恩恵を大きく受けている。 根底では、アジガンダと同じなのかな、とネヒロネは思った。 「ちょい」 とりとめのない考えに耽っていたネヒロネのおでこに、アジガンダが指を突き立てた。 「レディを待たせるとは、何事かな?」 「待て待て、僕の方が先に来ていたよ」 「まあ、細かいことはいいじゃない。あら……」 アジガンダは、ネヒロネの左脇腹あたりを見て言った。 「また、シャツに小さな穴が開いている」 「あれ、本当だ。全く気が付かなかったよ」 「このくらいなら、すぐに直せるよ」 アジガンダは、手に抱えていた袋から、針と糸と布を取り出した。 「ネヒロネ、しばらくは動かないでね」 素早い手付きでネヒロネのシャツを直すアジガンダ。 「すごいな……魔法みたいだ」 「大げさだよ」 噴水が水勢を増して、勢いよく立ち昇った。 世界には、魔法が溢れている。
/10ページ

最初のコメントを投稿しよう!

0人が本棚に入れています
本棚に追加