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指名手配犯が自首しに行く話
こんな形で王都に行くなんて……
自業自得なのだが……
リア?の館を出てから執事の殺気が止まらない。生きて王都までたどり着けるのかな
「リア。この男は指名手配犯なのですから殺してしまってもいいのでは?顔がわかるように首だけ持っていけば問題ないでしょう。」
あ、死ぬ
この執事に殺される
「ダメよ。いくらこの男に殺意しかわかなかったとしても殺してはいけないわ。王様にどう説明するのよ。飛び火するかもしれないし、私も聞きたいことが山ほどあるの。殺意もあるけどね。」
本当に大丈夫かな……
幸い、町長にこれまでの話を信じてもらうことが出来たため拘束されることなく馬車で王都に向かうことになった。
「……ところで、今更なのだけれど自己紹介がまだだったわね。私はウィスティリア。転生者よ。隣の執事みたいな格好をしているのはアングレカム。私のフィアンセよ。」
転生者だったのか。って言うより隣の執事は執事じゃなかったのか!見た目だけかよ!コスプレなのか!?転生者のウィスティリアさんの趣味なのか!?聞けないとてもじゃないけど聞けない
「俺はライゼです……。俺も転生者と似たような感じかな。」
「似たような感じ?……やっぱりそうよね……うん、そう。だからよ」
?
なんだ?何を納得しているんだ?
「そうね。お互い聞きたいことがあるようだから交互に質問し合いましょう。応えられないものは応えなくてもいいわ。お互いにまだ信用していないからね。なんなら私とアングはあなたに殺意すら向けているわ。」
そうですよね〜
でも、俺がやらかしたことを考えると優しすぎるくらいだ
「まずは私から質問するわね。あなた…………何者?」
いちばん難しい質問が来た。
これは素直に応えるべきなのか?
ただ、素直に応えたからと言って信じてもらえる訳では無いし……信じた場合は尚更信用されないだろうな。
素直に応えると
俺、主人公なんで神様に優遇してもらってこの異世界の人口を減らさないように見張り役として神様にしてもらったんですよ。
…………
………………
言えるか?
頭大丈夫か?ってなるよな
俺、主人公なんで
ってなんだよ
気持ち悪いな
モブが言うようなことじゃねーか
どうする
考えろ
ヤバいやつにだけはなりたくない
「考え込んでいるわね」
「…………」
「応えられなければいいの。私も聞き方が悪かったわ。"転生者と似たような感じ”と言ったから気になったのよ。あなたの魔力も転生者や召喚者のものとは少し違うみたいだったし」
魔力が違う……?
「すまない。詳しくは応えられないんだ。でも、俺は地球から来たけど転生者や召喚者では無いんだ。……ん?俺は召喚者?なのか?神様によって天界に召喚されたけど、天界から異世界へは転移したようなものだしな。いや、でも、転移は迷い込んだみたいなニュアンスがあるからな……。望んでこっちに来てるわけだし……。」
「なんだかあなた自身もわかっていないみたいね。まぁ、いいわ。あなたも元は地球にいたってことを聞いて少し安心したわ。で、あなたの質問は?」
何から聞くか。
アングレカムさんが執事の格好をしていることが一番気になるんだが今はアングレカムさんに話しかけるのが怖いのでウィスティリアさんがさっき言っていた魔力が違うってことを聞きたい。
「さっきウィスティリア……さんが言っていた魔力が違うってどういうことなんですか?」
「呼び捨てで構わないわ。あと、敬語も使わなくて大丈夫よ。魔力のことね。これは少し話が長くなるわ。一つ一つ話していくことにするわ。
まず、魔力について。
魔力はね、基本的には誰にでも備わっているし誰でも見ることの出来るものなのよ。ただね、普通の人が習得できるものは半透明くらいのね膜?みたいな……なんて言うのかしら、、気?に覆われているように見えるらしいのよ。その気の大きさで手練だとか魔族だとかを判断するらしいの。でもね、私の場合はそれに色がついていたり形があったりするのよ。共感覚とでも言うのかしらね?音に色を感じるとかそんな感じ。
あなたの場合、それが他の召喚者や転生者とは違うから気になったの。どう見えているかは内緒。」
そんなものがあったのか。
でも、目を瞑っているのはそれと関係があるのか……?
「あなた、私が目を瞑っていることが気になるのでしょう?あなたが私の質問に応えてくれたら応えましょう。」
「リア、いいのですか?そんなに自分のことを話してしまって。」
今まで黙り込んでいたアングレカムさんが心配そうにウィスティリアのことを見つめながら言った。
「えぇ、この程度話したところで支障はないわ。私の能力がわかったとしても防ぐことは不可能に近いもの。でも、心配してくれてありがとう。」
ウィスティリアは優しく微笑みながらアングレカムさんにそう告げた。2人は微笑みながら見つめあっている。目の前には2人の空間が広がっているのだが忘れていては困る。ここは馬車の中だ。そう、狭い。とても狭い。
本当に目の前で2人だけの空間が広がっているのだ。なんなら狭すぎて少し侵入してしまっている。気まづい。たすけて。
目のやり場に困り外の景色を眺め始めた時、ウィスティリアはハッとしたようにこちらを見てひとつ咳払い。
「ごめんなさい。話を戻すわ。次の質問ね。あなた、アンチ結界スキルを持ちながら結界スキルを持っていないってどういうことなの?しかもLv6だなんて。」
この切り替えの仕方には感心せざるを得ない。
「えっと、、Lv6なのは最近この異世界に来たばかりだという応えであってるかな?」
スキル構築の話はしてもいいかな?
スキル構築の概念がないって言うことだったけど転生者なら話も何となく通じるだろうし。《怠惰》だけは伏せておこう。
「さっきも言ったけど、俺は少し特別な方法でこっちの異世界に来たから元々のステータスが高いんだ。だから低いレベルでも少し旅をしたくなって、、結界を通ろうとしたんだ。まぁ、Lv的に通れないんだけど。俺の能力に《スキル構築》というものがあってさ、それでアンチ結界スキルを構築したんだ。」
「スキル構築…………。そんなものがあるだなんて聞いた事ないわ。でも、街ひとつ護るほどの結界よ?そんなのスキル構築ですぐに構築できるものなの……?チートにも程があるわ。」
「…………」
これ以上はノーコメントで
「いいわ!聞きたいことは聞けているし今度は私が応えるわ!」
「じゃ、じゃあ、、目のことを」
「そうね。ちゃんと応えるわ。私はね、目が見えないというより目が無いの。」
……なんて???
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