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「ねえ、昨日何があったか当然覚えてるよね?」
これが恐怖の始まりだったなんて、このときのわたしは夢にも思わなかった。
目の前には校内で一番可愛いと定評のある笹川凜々夏が怒った様子でわたしの方を睨みつけていた。そのルックスのおかげか、怒っていてもどこか可愛げがあって、この頃のわたしはそんなに彼女のことを恐れてはいなかった。
「別にそんなに怒らなくてもいいじゃない……」
わたしに関係のないことで怒りをぶつけられても困るので、面倒くさそうに言ってやったら笹川は元々赤かった顔をさらに赤くして、頬を思い切り膨らませた。
「あなたどこまでわたしのことコケにする気なの?」
笹川は両手に握りこぶしを作って、いよいよ目に涙を浮かべてしまった。
「絶対に許さないから!」
「そんなこと言われても知らないわよ。わたしのせいじゃないもの……」
事実を言っても彼女は聞く耳を持たず、早足で去っていく。本当にわたしは何も悪くないのに逆恨みもいいところである。
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