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顔にひっついた枯葉を取って目を開ける。 ほんともう最悪。 「あーもう」 「そんな怒んなよ怖ぇな」 陸也は地団駄を踏む私を細めた目で見て、またすぐ薪を拾い始める。 「だって腹立つんだもん!私中学生になったんだよ!なのになんでこんなしょうもないことしなきゃなんないの!」 「しゃあねぇじゃんか。薪がなくちゃ村が困っちまう」 人手が足りていないこの村では子供といえども村のために仕事をしなければならない。今やっている薪拾いもその仕事の一つ。 薪拾いはただ山に行って燃えそうな木を拾ってくるだけの簡単な仕事で、この村で薪拾いを任されるのはせいぜい小学生まで。 「そうじゃなくて!みかちゃんとかゆうちゃんは裁縫とか料理を任されてるのになんで私は薪拾いなのよ」 「それはお前が裁縫も料理もできないからだろ」 「正論とかさいてー。あんたいい加減にしなよ」 「うそだろ、俺が悪いのか?」 「じゃあ何?私が悪いの?はいはいそうですかそうですね、わかりました私が悪うございましたよ」 「微塵も悪いとおもってねぇなこれ」 「なんなのさっきからうるさいなぁ。あんた女の子に謝らせといてそれでも納得いってないっていうの?これ以上私は何をすればいいのよ」 「料理と裁縫の練習だよ」 やっとるわい!と大声で返し、私も薪を拾い始める。 「今度玉留めのやり方教えてやるから元気出せって」 「玉ごときじゃ私の糸は止められないのよ。ブロック塀持ってきなさいよブロック塀」 「不器用がすぎんだろ……」 お互い背負ったカゴが埋まり始めた頃、ちょうど夕陽が隠れ始めた。 「そろそろあがるか」 額の汗を袖で拭く陸也。同い年、同じ学校、同じ授業を受けてきたはずなのに何をやらせても陸也の方が上手くこなす。 「ていうかあんたも怒りなさいよ。くみっこの私のせいであんたもこんな仕事させられてるんだから」 中学生の男子ともなるといろんな仕事を任せられる。 中には新聞配達などお駄賃ををもらえる仕事もあるのに、私が何もできないせいで陸也もレベルの低い仕事しか出来ないでいる。 「別に怒っちゃいないよ。くみっこだからお互いが一緒にできる仕事をやらないと」 陸也はいいやつだ。なんでもできるくせにできない人を見下さない。陸也とは物心ついた時からの付き合いになるが、あいつが文句を言っている姿は見たことがない。 「沙耶も気にすんなよ。くみっこだから助け合うのは当然だよ」 私はこのくみっこという制度が大っ嫌いだ。
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