あの人の

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 シートを開けて確認すると、外はだいぶ明るくなってきていた。  俺はしのぶを穴に残し、外の様子を確認しに行くことにした。  あたりは一面の雪に覆われていた。  俺たちは一体どのくらい流されてきたのだろう。見渡す限り、木の一本も生えていないこの雪山に、現在地を教えてくれるような目印は何もなかった。  俺としのぶは幾人かの足跡がついている道を辿っていたのだが、それももう、昨夜の積雪によって綺麗になくなってしまっていた。  それでなくとも、かなり押し流されてしまっていて、恐らくもといた道はここからでは目視できない所にあるのだろう。  俺は現在地の把握を諦め、付近の探索をすることにした。  まずは足元を慎重に確かめながら、俺たちの荷物が吸い込まれていった崖を目指した。    真っ白な視界が、境界線の先から突然真っ黒になる。  崖は切り立っていて、はるか下には鬱蒼とした木々が連なっていた。  雪崩は俺たちを吐き出した後、この崖に勢いのまま身投げしていった。俺はよくない想像を振り払うように頭を振り、崖を背にした。  地図も荷物と共に流されている。俺はかろうじて身につけていた携帯電話を取り出した。  しかし、電波は入っていない。昨夜穴の外で確認した通りだ。  どうやら登山道からかなり流されたらしく、電波の入りにくい山間部に落ち着いているようだった。  しばらく近くを歩き回ったが、俺はそれ以上の探索を諦め、しのぶのいる穴に戻った。  しのぶは自分の膝を抱えてじっとしていた。俺が戻ると、ばっと顔を上げてこちらを見やったが、何も言わずに隣に座る俺を見て、無言のまま再び前を向いた。  レジャーシートを閉める前に、あの人がいた場所を見た。しかし、そこにはこんもりとした雪が積もっているばかりだった。
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