わたしの太陽

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♢ 「ねえ、覚えてる?」  目の前に座る彼女は不意に、そう言った。  言われた私はというと、思い当たることがありすぎて困ってしまった。  彼女とはそれなりに長い時間を共有してきたつもりでいる。  高校1年生の頃に出会い、3年間同じクラスだった。授業はもちろん体育祭も文化祭も球技大会も、私は彼女と過ごした。  私が得意な数学の宿題は彼女が、彼女が得意な日本史の宿題は私が見せてもらっていた。  テスト前は「今化学のワーク終わった」なんて報告メッセージを送りあった。  体育祭の時は携帯使用禁止と知りながら本校舎と別棟を繋ぐ2階の渡り廊下でこっそり写真を撮った。  思い当たる思い出がありすぎる。 「なにを?」  彼女はわたしにどの思い出を覚えていて欲しかったのか。 「わたしが死にたいって言った日のこと」  いや、もしかしたら覚えていてほしくなかったのかもしれない。 「……覚えてるよ」  でも、私は覚えていたから正直に答えるしかなかった。 「そっか」  覚えていて良かったのか、悪かったのか。  彼女は表情を変えないまま綺麗な手でストローをくるりと回した。  アイスティーに浮かぶ氷がぶつかって、カラン、と音が鳴った。
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