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「やはり記憶は修復できなかったか……」
「記憶領域の43パーセントが重大な被害を受けています。サルベージしていますが、復元できるかは五分五分といったところですね。永遠に喪われたかもしれません」
エミリアは、機械のように一定のリズムで淡々と報告した。男は厳しい顔で虚空を睨んでいる。
「それでマルチェロ博士、あなたはどうするのです?」
「決まっているさ。限界まで記憶と人格の復元を試みる。……だが、その前に我々にはやらなければいけないことがある。そうだな?」
「はい。博士」
エミリアは寝台から立ち上がり、横に置かれていた次元圧縮兵器を手にとった。
かなりの重量があるが、ナノマシンと人工知能を埋め込まれ生体ロボとして改造されていたエミリアはそれを軽々と扱えた。
「それでは行って参ります」
「そうだ。私を危険人物扱いし暗殺しようとした奴らを……、私からエミリアを奪ったこの世界を私はけして許しはしない! 行け、愛しの生体兵器よ。この地上に存在するすべてを滅ぼせ!」
「了解。命令を実行します」
生きる兵器と化したエミリアの後ろ姿を見ながらマルチェロ博士は狂気的に笑った。
「たとえエミリアの記憶が戻らなくても、綺麗になった世界でまた新しい思い出を作ればいい。壊されても壊されても、私は何度でも思い出を作ってやるぞ。待っていてくれ、最愛の人よ」
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