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十九時を報せるチャイムと同時に、司書教諭が
図書館内を徘徊し始めた。部活同生も含め完全
下校の時刻になった為、居残り勉強や読書を切り上げるよう呼び掛けて回っている。
周囲にならい教材やノートを片付けながら、
ケントの胸の内は一日が無事に終わった解放感
よりも刺激の無い退屈な毎日への不満に満たされていた。
家や学校に居場所が無いとも言えないが、圧倒的に何かが足りないのだ。
その不満感は、意味も無くケントを物悲しい気持ちにさせてしまう。
学校を出て電車に揺られていると、ポケットに入れていたスマホがバイブ音を鳴らした。画面を
確認すると、仕事から帰って来たと思われる母
からのメッセージが届いていた。
『また図書館でお勉強?夕飯までには帰って
来てね』
ケントの両親は共働きで、仕事から早く帰宅した方が夕飯を作るのが習わしである。その為、今日は母が夕飯を作るだろう。ケントは簡単な返答を送ると、スマホをポケットにしまい心の中で
謝った。
母さん、ごめん。
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