ラウド・マイノリティ

　藤美桐丘(ふじみきりがおか)暴行事件、庚台青砥はその容疑者だった。
　この事件で最大のポイントとなったのは被害者が自分のことを被害者と思っていないことにあった。
　性的被害を受けた子供たちは自らそれを望んだと口をそろえたのだ。
　そして被害者のはずの子供たちの年齢が皆十三歳以上だったことが彼の起訴を困難にさせた。
　それでも私は弱者たる子供たちを狙った卑劣な犯行に憤りを覚え、どうにかしたいという気持ちからペンを握り、世論を味方につけるために庚台容疑者が子供に手を出すに至らせたアニメや漫画などの媒体の害悪性と、十八歳未満の子供の精神がいかに未発達であるかということを訴えたのだ。
　庚台容疑者の事件が世間の高い関心を集め、最終的にアニメや漫画の表現の規制と同意年齢の引き上げという結果を勝ち取ったのだ。
　世論を動かした私の記事は高く評価されたが、それ以上にこれで新たな被害者が増えずにすむことが何よりも嬉しかったものだ。