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1.
洗濯物を取り込みにベランダに出ると、子どもたちのはしゃぐ声が聞こえてきた。手すりの上から覗き込めば、道向かいの公園にはざっと30人ほどの人影が見える。
あ、廉太郎だ……こうして見ると小さいなぁ
一人息子の姿を見つけ、私は思わず目を細めた。2ヶ月前に一年生になった廉太郎はずいぶん大きくなったと思っていたのに、公園を占拠する小学生たちに混ざるとまだまだ幼児みたいだ。
今日は、ゆいくんと一緒じゃないのかな?
最近廉太郎は毎日、中学生の「ゆいくん」に遊んでもらっているらしい。私はまだ彼に会ったことがなく顔を知らないのだけれど、見たところ息子は一人でブランコをこいでいる。
公園の外に目を向けると、制服姿の中学生が何人か通学路を歩いていた。引越して来たばかりで中学校のことはよく分からないが、きっとゆいくんもまだ下校途中なんだろう。今頃この社宅のどこかのドアを開けて、「ただいまぁ」と言っているかもしれない。
中学生なら、きっと声変わりしてるんでしょうね。
小鳥のような声で話す廉太郎もいつかは、声が低くなって、ヒゲが生えて、母親の身長を抜く日が来るだろう。いつも腰の高さにまとわりついてくる息子の成長を思い、ふふふと一人笑った。
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