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「ねぇ廉太郎、ゆいくんも同じ社宅って言ってたよね? お家は何階?」  テーブルの向かいでハンバーグを頬張る息子に聞くと、廉太郎は細い喉をごくりと上下させて左手を広げた。 「5階!」 「やだ、そんなわけないじゃない、ここ4階建てよ?」 「だってゆいくん5階って言ってたもん!」  2階の聞き間違いか、からかわれたのかもしれない。私は質問を変えることにした。 「じゃあさ、ゆいくんの名字って何?」 「知らない」 「じゃあ、ゆいって、唯人(ゆいと)とか由一郎(ゆいちろう)とかじゃなく、ただのゆい?」 「知、ら、な、い!」  まぁ、そうだろうと思ったけどね。食事の邪魔をするなと言いたげな目で睨んでくる息子に、小さくため息をついた。 「毎日遊んでもらってるし、親御さんにお会いしたらご挨拶しないとと思ってるんだけど」 「遊んでもらってるんじゃないよ! 一緒に遊んでるの!」  一人っ子の廉太郎には、「遊んでもらう」という感覚が理解できないのかもしれない。さっきもランドセルの底でくしゃくしゃになった期限切れのプリントを出してきたくせに、一丁前になったつもりでいるから笑ってしまう。 「中学生って、テストとか部活があって忙しいんだから、わがまま言って困らせたらだめよ?」 「分かってるよ!」  分かってないから言ってるのよ。その言葉を飲み込み、私は肩をすくめた。
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