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 田舎の一軒家よりはかなり手狭になったものの、引越し前には隣近所に同世代の子どもがいなかった廉太郎は、気楽に友達と遊べる団地の子たちが羨ましかったらしい。  友達はできるか、訛りをバカにされないか、そんな親の心配をよそに、廉太郎はすぐに新しい環境に慣れ、毎日ランドセルを放り出して遊びに行くようになった。引越して2ヶ月でほぼ方言が消えた息子の順応性の高さに、海外赴任だったらバイリンガルになれたかもと、ちょっと惜しく感じてしまったくらいだ。  3歳になれば楽になる。5歳になれば少し手が離れる。小学生になれば自然としっかりする。そんな先輩ママの言葉に励まされ、早く大きくなってほしいと思って育ててきたけれど。  親のと同じ大きさのハンバーグをペロリと平らげた息子に、まだ赤ちゃんでもよかったのになぁと、私は少し寂しく感じた。
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