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2.
「この社宅で、ゆいくんって中学生の息子さんがいる方、知ってる?」
廉太郎が就寝した22時。温め直した夕飯を食べ始めた夫に聞くと、彼は眉をひそめて箸を止めた。
「いや、聞いたことないなぁ。子どもが中学生なら年次も上だろうし、職場離れてまで会社の人と話したくないしな」
夫はもともと、上京にあたり社宅に入ることに好意的ではなかった。本社に片道30分で通える賃貸物件を調べ、都内の家賃相場に閉口するまで、家に帰ってまで会社にいるようで嫌だと言っていたのだ。
「廉太郎がね、毎日のようにゆいくんって子に遊んでもらってるのよ」
「それで? なにか問題でも?」
「なんとなく、もっと、同じ歳くらいの子たちとも遊んだ方がいいかなぁと思って」
「別にいいじゃないか、学校では同じクラスの子たちと過ごしてるんだろうし」
「そうだけど……今日、社宅の一年生たちが仲良く遊んでるの見ちゃってね。廉太郎はゆいくんとばっかり遊んでるから誘ってもらえないんじゃないかって、心配になっちゃったの」
ゆいくんに遊んでもらってありがたいという気持ちはもちろんあるけれど、最近私は少し不安に感じてもいた。欲を言えば、息子には同じ年頃の子たちとも仲良くしてほしいのだ。
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