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「でも、せっかく遊んでくれてるのに『たまににしてほしい』なんて言えないし、親御さんにお願いするにしても角が立つといけないし……社宅って、難しいところもあるわよね」 「おいおい、社宅に入りたいって言ったのは瑛子だろ?」 「それはそうだけど……」  社宅を希望したのは、条件のわりに家賃が格安だからだ。家計を考えての選択を、自分のわがままのように言われるのは面白くない。 「専業主婦になったんだし、奥さんたちとはうまくやってくれよ?」 「分かってるわよ」  仕事を辞めたのは、夫の異動について来るためだったのに。  ここで私が反論したら、けんかになるんだろうな……  夫婦げんかをしたことがないと言えば羨ましがられるけれど、結局いつも私ががまんしているだけの話だ。  下向きにため息を吐くと、ミルクティーの表面にさざなみが揺れた。
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