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「ただいまー!」  6時半に帰ってきた廉太郎が、勢いよくドアを開けた。ちょうど廊下にいた私を見つけると目を細め、タックルするように抱きついてくる。 「ちょっとぉ、タオル落ちちゃう!」  笑いながら、畳んで重ねたタオルのてっぺんを顎で押さえる。と、閉まりかけのドアの向こうを通り過ぎる人影が見えた。学ランを着た中学生だ。一瞬のことで顔立ちまでは分からず、こちらを見て笑っていたという印象だけが残った。 「もしかして、今のがゆいくん?」  聞くと廉太郎は抱きついたまま後ろを振り向いたけれど、もうドアは閉まっている。 「分かんないけどたぶんそう」  この部屋の前を通るってことは、3階の子だったのかな? いや、廉太郎を部屋まで送ってくれただけかもしれない。思案していると、廉太郎は手を洗いに洗面所に入りがてら聞いた。 「ねぇママ、もしぼくがテストで悪い点をとったら、嫌いになる?」 「なぁにそれ。なるわけないじゃない」 「だよね」 「ていうか廉太郎、もしかして0点のテスト隠してるの?」  冗談のつもりで水を向けると、息子は洗った手をタオルで拭きながらニヤッと笑い、廊下に放り出してあったランドセルからくしゃくしゃになった国語のテストを引っ張り出した。
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