彼の話

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 周りの子が家にお金が無くて大学に行くことができず、就職をするという話を聞いて、自分は恵まれた環境にいるのだから頑張らなくてはなくてはいけないと思い始めていた。  だから最近は、今までなら携帯をいじっていた夜の時間に、机に座って参考書や問題集を開くようになっていた。親からは褒められることが増え、勉強を応援されていて、俄然やる気になっていた。  そんなある日、彼は学校から帰宅した。家には両親は働きに出ていて、誰もいなかった。太陽の光はオレンジ色になって、外は目が開けづらく視界が悪かった。ようやく家に帰ってきて、彼は目を大きいた。視界が開けて、とても気持ちが良かった。  家は一軒家で二階に自分の部屋があった。リュックを玄関に投げ捨て、一回の洗面台で手を洗ってうがいをし、冷蔵庫に走った。昨日父親が買ってくれたコーラがあった。冷蔵庫を開け、力を振り絞ってキャップを開け、すっかり冷えた黒い液体を喉に流し込んだ。
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