彼の話

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 ゴクゴクと言う音と共に、自然とハァ〜という長いため息のような声が出た。ペットボトルを見るともう半分程無くなっていた。なんだか悲しい気持ちになり、後は残すことにして冷蔵庫にしまった。   それから二階に走って登り、本棚の小さな引き出しを引っ張り出した。何枚かの千円札が入っている。彼が大切にしまっていた今月のお小遣いだ。彼は千円札を一枚取り出すと、それをポケットに入れ、また階段を走って降りた。そして、何も持たず、玄関に乱雑に置かれた靴をかかとを踏みながら履いて、ドアを開けた。  また、オレンジ色の光が目に入って来た。思わず、眩しくて目を細める。そして、そのまま歩き始めた。今日は彼が読み続けている漫画の新刊の発売日だ。月刊誌で連載されているから、新刊が出るまでかなり時間が空く。だから彼は、他の漫画を買うときより一層楽しみで興奮していた。  今日発売の最新刊の、一つ前の刊の話を思い出す。ようやく主人公が敵と対峙し、これから戦うというところで終わっていた。それを思い出すと、より一層興奮して彼は走り出した。
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