彼の話

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 少し行ったところの右手に信号が見えた。青だった。彼は赤信号になって待つのが嫌で、より一層速く走った。不思議と興奮しているからかここまで走った疲れは感じなかった。  ようやく渡る直前のところまで来たとき、信号はまだ青だった。彼は心の中で 「よし!」  とつぶやくと走って渡り始めた。途中で黄色になったから一層腕を振って走った。もう少しで渡り切るというところになって、彼は突然何かに吹き飛ばされた。一瞬だった。彼は自分が浮いている事を意識したとたん、地面に叩きつけられた。  頭から落ちたようで、最初に頭をぶつけた感覚があった。それからまず最初に眩しいと思った。オレンジの光が目に直接差し込んで来る。目を細めながら少し下にすると、そこにはかなり大きいトラックがぼんやり見えた。どうやら、光でトラックが見えなかったようだ。運転手がトラックから降りて、僕に向かってトボトボと歩いて来るのが薄目に見えた。そして、僕に話しかけて来た。
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