素敵な左足

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少年とロボットが、時計台の内部でボードゲームをしていた。 勝っているのはロボットだ。 少年は、外でボール遊びをしている子供たちの声に気を取られ、手元が疎かになっていた。 「行ってきたら?」 見かねたロボットが少年に声をかけた。 「いい」 「どうして?」 「だって、あの遊びは君ができない」 「そうだね」 ロボットには左足が無かった。 「探してあげようか? 君の左足を」 「大丈夫。僕は不自由してないよ」 「でも、あった方がいいと思うんだ。両足があればサッカーだってできる」 翌日、少年はロボットに黙って左足を探す旅に出た。 サイズの合う部品は直ぐに見つかったが、少年は「あれも駄目」「これも駄目」と、なかなか首を縦に振らない。 ――せっかくなら、世界一素敵な左足をプレゼントしよう。 店を梯子し、国を跨ぎ、少年は取り憑かれたようにロボットの左足を探し続けた。
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