少年にあらず

11/23
前へ
/23ページ
次へ
「だって、だって伏真クンはこんなに小さくって」  と言いながら、膝辺りに手を遣る。 「俺はぬいぐるみか!」  思わずツッコむ。  そんなに小さな人間はいない。  そして、そういうことかと、何かふわっとわかった気がした。 「持岡さん。俺を忘れていたね」  理由はわかる。  俺が小さかったから。  恋愛対象外だから。  そうだろ? と指摘した。 「伏真クンだけを忘れようとしたわけじゃないんだけどね。引っ越しが唐突で、友だち全員に連絡取っちゃダメと言われて、できなかった」  持岡奈保が微苦笑して俯いた。  連絡できなかったのは俺だけではなく、友人すべてを捨てて引っ越さなければならなかった。 「大変だったな」 「うん、ちょっとね」 「頑張ったな」 「好きな仕事ができているから、まあいいか……って」 「そんなおまえに提案がある」  俺はニヤリと笑う。  持岡奈保へと人差し指を立てた。
/23ページ

最初のコメントを投稿しよう!

7人が本棚に入れています
本棚に追加