少年にあらず

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「高一のあのとき、家に来た?」  あれは秋の始まりだった。  引っ越したのは冬だという。  俺は首を横に振る。 「背がな。高一の夏、急激に伸び始めてな。骨も筋肉も痛くて、おまえんちに行ってこっそり小さな親切をしたくても、それどころじゃなかったんだ」  痛みが治まってから会いに行こうと考えた。できれば背が高くなってからさりげなく会いたかった。  骨がギシギシ音を立てて伸びた。  筋肉が骨の成長に悲鳴を上げた。 「二年足らずで三十センチくらい、背が伸びた。すごいだろ」 「わたしと同じくらいの目線になっているもんね。本当、すごいわ」  残念ながらまだちょっとだけ低い。  しかし目線は合っている。  何の問題もない。  だから 「嫁に来い」
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