少年にあらず

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「自転車で海に行く。なかなか乙女心をくすぐるわね」 「俺と結婚したらここで暮らせるが」 「都心にある広告代理店まで御用うかがいに行くのに、時間がかかりそう」 「バスまたは自転車で駅に行く。駅から都内まで乗り換えなしで約一時間」  合計一時間半ほどで都心。  受注はリモートをお勧めしたい。  ちなみにどこを撮影しても絵面が良い、サマになる横浜はご近所と断言してもいい気がする。 「だから嫁に来いと?」 「俺はこう見えても君と同い年だ」 「わたし、そんなに若く見える?」  嬉しそうだが違う。 「俺が童顔なだけだ。持岡さん、三十二だろ」 「……名刺に年齢は書いてないけど。さては撮影している間に調べたね」  俺の手を見る。 「言いがかりは止せ。スマホはポケットの中だ。取り出してないからな」  両手を挙げて見せた。 「年齢のことはまあいいとして。あなた、その顔で三十過ぎているって、詐欺(サギ)(まが)いの常識破りね」
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