蒸発

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蒸発

俺の名前は須藤 彰どこにでもいるサラリーマンだ。いや、正確には。”サラリーマンだった”という方がいいだろう。というのもリストラされたんだ。まぁ、世の中不景気で仕方ないといえば仕方の無いことか…なんて余裕ぶってはいるものの今の貯金や再就職先、不安になる要素は沢山ある。とりあえずこの足で行くのは…カラオケ?いや、たまにはゲーセンなんてのも悪くないか?キャバクラも捨て難い…あっ!!BARにでもいって今の自分に酔うのもありかもな!!…そうして俺は現実逃避のお手本のようにその日は酒に溺れ無理にでも笑った。そんな俺の事情の一切を知る由もないキャバクラのねーちゃん達とただひたすらに飲んで笑ってとりあえず手持ちが無くなりそうになったところで時計が指すのは午前様。とりあえず気分上々になったところで財布を薄っぺらくして俺は帰路を行くことにした。はずだった…突然の事で何が何だか分からず俺の視界が垂直に変わった。最初は酔すぎで転けたのかと思ったが残酷なことに世はどこまでも俺に無情だった。頭に痛みが走り何やら笑い声が聞こえる。ぞろぞろと倒れた俺の周りを囲んだのは通りすがりの親切な人や警察のそれらとは明らかに一線を画すものだった。そう、俗に言うオヤジ狩りというやつに俺は出くわしてしまった。だがそんな事をする連中も所詮素人死なない程度の手加減なんて知る訳もなく初撃の俺の頭にくれたフルスイングは簡単に俺を殺した。何だよ、リストラされた日に殺されるなんて何の冗談だよ。俺には少しの夢も見させてはくれないんだな。こうして俺はその辺の水たまりが無くなるみたいに簡単に消えて亡くなった。
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