第1話 小さな依頼人

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 僕たちはここでよく、休憩と称してなにかしらのゲームをしている。  その内容は、トランプタワーを作ったりサイコロの出目で勝負したり、紙飛行機を飛ばしたり条件付きのしりとりをしたりと、多岐にわたっている。  これらはすべて、千鶴さんが考えているもので、勝ったほうが負けたほうに何でも一つ命令をすることができるという特典が付く。  千鶴さんの用意する勝負は、基本的に誰にでもできるシンプルなルールになるのだが、僕の勝率は極めて低いのが現状だ。  これのどこが重要でかつ難しい仕事なのかと思っている人もいるかもしれないが、下手をするとこれは探偵業に匹敵するくらいの難易度だと僕は思う。  身近にあるものを使ってゲームを考える。それだけならまぁいい。  しかし、求められるのはゲームそのものの楽しさだけでなく、公平性も必須なのだ。  どちらかに有利な勝負にならないようにルールを定めるのはなかなか難しい。  これまでは毎回、千鶴さんが考えるゲームだから千鶴さんに有利なものになっていて、だから僕の勝率が低いのではと、そう思ってくれている人がもしかしたらいるかもしれないが、残念ながらそうではない。  ゲームのルールを説明された段階では、いつも勝てそうな気はするのだ。  少なくとも、これまでのゲームで最初から分が悪いと思ったことはない。
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