第1話 小さな依頼人

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「おまたせー。蓮くんのコーヒーのおかげで思ってたより早く終わったよ」 「え、もう終わったんですか? 早すぎません?」 「そんなことないよ。コーヒーをもらってから十分くらい経ってるよ」  そんなバカな。  いや、千鶴さんがこんなところで嘘をつくわけないから、僕がゲームを考えるのに夢中になっていたということだろう。  ちなみに、探偵モードではないときの千鶴さんは、嘘をつくのが上手ではない。  嘘をつかないのではなく、わりと簡単に見抜ける嘘をつく。それがまたかわいい。 「さぁ、蓮くんはどんなゲームを考えてくれたのかな?」  茶目っ気にあふれた笑顔を見せて、千鶴さんは僕の正面の席につく。  千鶴さんをただひたすら眺めるゲームがしたくなった。  そのとき、千鶴さんが口に運んだグラスがもうすぐ空になるのが目に入った。それを見て、ひらめいた。  僕にしては冴えた、しかも僕ならではのゲームが思いついた瞬間だった。
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